相続放棄について
司法書士にとって相続放棄は割と身近な業務ではありますが(そう思っているのは自分だけかもしれませんが)、今回は少し違う観点からみてみたいと思います。
⑴手続としての相続放棄
司法書士が行う相続放棄の手続とは、主に以下の内容と考えられます。
・申述書と呼ばれる書類を作成すること
・添付書類となる戸籍謄本等を取得すること
→当然、ご依頼いただく内容によりどこまで代行するかが変わってくるわけですが、大体上記2つ
はセットになることが多いです。なお、この場合、依頼者からは印鑑をもらって書類を裁判所に
提出することになります。そして、裁判所から照会の通知が届いた場合、通知書に対するサポート
も含まれることになります。
⑵そもそも相続放棄をするかの判断
実はこれが一番の難問なのではないかと思います。というのも、「明らかに借金が多い」、「絶対
に相続手続に関与したくない」などの事情があれば相続放棄一択なのでしょうが、逆にそれ以外の場合はどう判断するのがよいのでしょうか?
少し考えてみましょう。
例えば、
・生前ほとんど接点がない人の相続人になったとき
・いわゆるデジタル遺産がありそうなとき
・事業をしていたため、借金があるかもしれないとき
これらはあくまでも一例ですが、例え家族であったとしても本人以外が本人の情報を把握するのはとても困難です。
特に「デジタル遺産」は今後確実に問題になると思います。因みに、これがなぜ問題かというと、「デジタル」であるが故に、
・書類が残っていないことが多い
・パソコンないしスマートフォンが開けなくなる(セキュリティの問題)
といった事情が重なり、そもそも遺産の把握すら困難というのは容易に想像していただけるかと思います。
因みに、普通の(ネット銀行ではない)銀行は何かしらの通帳や書類(特に郵便物)が残っていることが多いため、そこまで問題にはなりません。
⑶対応策
では、実際に相続放棄のご相談をいただく際にどう対応しているかということですが、通常は以下のような流れでお話ししております。
・相続手続全般の流れ
・相続放棄や限定承認の仕組みをご説明
・書類など資料料があれば見せていただく
→戸籍や通帳、証書など
・相続放棄するか微妙な場合は熟慮期間伸長の申立を行うか検討
→相続放棄するか検討する時間を延ばせます。
・明らかに借金が多い等の場合は手続の詳細をご説明し、どこまでご依頼いただくかを決める
・ご依頼いただいた内容の業務に着手
⑷最後に
相続放棄と一言で言っても正直ケースバイケースな部分があるため、一概に相続放棄一択が適切かどうかというのは決められません。もちろん司法書士はご依頼者本人ではありませんので、数ある手続についてご案内し、どれを選ぶかはご本人に決めていただくわけですが、その判断基準をきちんと提示することもまた業務に含まれることは当然であり、非常に難しい部分を含むことになります。
もし、相続放棄について悩まれている方がいらっしゃいましたら是非一度我々司法書士に相談してみませんか。もちろん相続放棄は「一つの選択肢」ですから、相続全般のお悩みであっても一度相談されてみるのがよいかと思います。自分の選択肢を知ることだけでも非常に価値があることだと思いますし、自分だけで判断する前に他の人の意見も聞くことはとても意味のあることだと思います。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
司法書士・行政書士 相波聡明
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