不動産登記とは
不動産登記とは、簡単に言えば土地や建物の名義が誰のものか?担保がついているか?といった内容を国(もっと言えば法務局)が証明する制度です。
本来、不動産を誰が所有しているかというのは外から見てわかるものとは限りません。住んでいる人が所有者であることもありますが、借りているのかは見た目ではわからないですよね?
そこで、国が不動産の登記簿(登記記録とも言います。)という制度で、その所有者であったり、担保であったり、現状であったりなどを証明する仕組みを作ったわけです(非常にざっくりとした説明にはなりますが。)。
車は陸運局、船は船舶登記など、国が所有者などを証明する制度はいろいろありますが、その中でも最も財産的価値の高い(と言われる)不動産については、我々司法書士又は弁護士のみが名義変更等の登記申請を代理することができます。
一方、土地や建物の「現況など」(場所や大きさなど)を担当するのは土地家屋調査士という別の資格者であり、こちらも独占業務となっておりますので、ご依頼を検討する際は詳しく聞いてみることをおすすめいたします(なお、あくまでもご本人の「代理」として行うのが資格者なので、もちろんご本人が登記申請を行うことは可能です。)。
不動産登記には色々な種類がありますが、司法書士に依頼する場合は、「司法書士に対する報酬」と「登録免許税」という税金がかかります。
また、関連して、登記の内容によっては他の税金(贈与税や不動産取得税、譲渡所得税など)がかかることもあります。
詳しくは司法書士にご相談ください。
税金は税務署や税理士の範疇ですが、おおまかな説明はしてもらえると思います。
以下、こちらのページでは項目をいくつかにわけてご説明いたします。なお、あくまでも一般的な内容となっておりますので、個別具体的な事案には該当しない可能性があることを付け加えておきます。
こんな場合は登記が必要
建物を新築した →所有権保存登記
建物を新築した場合、登記の手続が2つ発生します。
1つは建物表題登記、そしてもう1つが所有権保存登記です。
まず、表題登記というのは、建物の現況(場所、構造、床面積など)を登記するも
ので、土地家屋調査士が担当する分野になります。
建物を新築されたら、まずは表題登記を行ってください。
次に、所有権保存登記を申請することになります。
所有権保存登記をはじめ司法書士が行う登記は「権利」の登記と呼ばれ、所有権や
担保などを登記簿に表示するのがその業務なのですが、まさに所有権保存登記はその最初
の登記になります。
必要書類は、通常以下のとおりです。
・住民票
・委任状
・(建物の種類によって)住宅用家屋証明書
また、登録免許税は建物の認定価格または固定資産税評価額×0.15~0.4%となります。
詳しくは司法書士にお問い合わせください。建物の種類により登録免許税は異なります。
土地建物を買った・もらったなど →所有権移転登記
所有権移転登記は、一言で言えば「名義変更」です。もう少し補足すると、名義が変わるには必ず原因があり、原因によって税金がかかったり、必要な書類が変わってきたりします。
代表例としてよく出てくるのは「売買」や「贈与」です。
どちらも「現在名義を持っている方」から「買う人・もらう人」への名義変更となります。
2つの主な違いは対価(つまりお金)があるかないかです。この差は原因・税金に影響を与えますので安易な売買代金の決め方は要注意です。
よくある事例
売買
・個人間での売買(親しい間柄・親族間の売買)
売りたい・買いたいが一致すれば売買契約は成立するのですが、名義変更しておかない限りあなたの名前にはなりません。
親しい中であっても登記はきっちりしておくに越したことはありません。
また親族の場合、売買代金を巡って税務署から売買価格について説明を求められる
ことがあります。市場価格からかけ離れた値段であった場合などは差額について贈与税の納付を求められる可能性もあります。
・法人成りに伴う売買(個人から会社への売買)
個人で事業を行っている方が、会社を立ち上げることがあります。
会社の売り上げによっては会社の名義にした方が税金対策として有効な場合があり、
そのときは個人の方から会社へ不動産の名義変更を行い、会社が個人に売買代金を
支払うことになります。
税理士さんが主導されるケースがほとんどです。該当しそうな方は相談してみると
よいかもしれません。
贈与
・暦年贈与
「贈与税は年間110万円までは非課税」というのを聞いたことがありますか?厳密に言うと少し違うのですが、この制度を使って毎年少しずつ不動産の名義を移転する方法があります(暦年贈与と言います。)。
もらう人1人につき110万円なので、もらう人がたくさんいればこの枠を有効に使うことができるのですが、毎年やるとその分手間と費用がかかります。
・相続時精算課税制度
上記暦年贈与と比較される制度ですが、2500万円まで非課税で贈与することができ
ます。ただし、相続のときに精算することになるので相続税対策になるかは慎重に検討
する必要があります。また、親・祖父母から子・孫への「縦」の関係のみという限定が
あります(また、あげる人60歳以上、もらう人20歳以上です。)。
さらに、一度この制度を選択すると、暦年贈与の110万円の枠がなくなるので、
どちらの制度が有利なのか、慎重に検討した方がよいでしょう。
・配偶者への贈与
婚姻期間20年以上の夫婦が、居住用不動産やその資金を贈与するときの特例です。
2,000万円という枠で贈与が非課税となります。
ただ、この制度を使った後に相続が発生した場合、原則として相続税の対象になってしまうため、ある意味では慎重に検討する必要があるでしょう。
配偶者が20年間(以上)支えてくれたから今がある、という趣旨と言われています。
ならば相続税の対象から外してくれてもいいような気がするのは私だけでしょうか?
また、あくまでも贈与税が非課税をいうだけでその他の税金(登録免許税・不動産取得税)等はかかります。この部分がネックとなって手続きを諦める方もいらっしゃいます。
ローンを組む →抵当権設定
あなたが銀行から融資を受ける際、担保を出せと言われたら何を出しますか?
家を買う場合ならば土地建物でしょう。その際に発生するのが抵当権設定登記です。
代表例は、正に住宅ローンです。
因みに余談ですが、昔のドラマのように権利書を債権者が持っていくというのは
あまり現実的ではありません。なぜなら権利書だけもっていても名義変更や担保の設定ができないからです。
そんな、住宅ローンに伴う抵当権設定登記は司法書士の報酬のほかに登録免許税として、債権額(抵当権設定額)×0.1~0.4%かかります。
例えば1,000万円の住宅ローンの抵当権を設定すれば
1,000万円×0.1~0.4%=1~4万円です。
その差はどの段階で抵当権を設定するかによって変わります。
一般的には、先行して土地のみに担保を設定する場合0.4%になり、建物と土地に対して一括で抵当権を設定する場合は、建物が新築であれば0.1%になります。
必要書類
抵当権設定の場合、必要書類は以下のとおりです。
・抵当権設定者
- 抵当権設定契約書等
- 権利書又は登記識別情報通知
- 印鑑証明書(3か月以内)
- 実印(書類に押印するため)
- 委任状
- 運転免許証等の公的本人確認書類
・債権者(抵当権者)
- 委任状
その他、詳しくは司法書士にお尋ねください。
ローンを完済した →抵当権抹消登記
住宅ローンを完済した場合や、事業用の融資を完済した場合に必要となる登記です。
通常、ローンを完済すると、銀行などから書類一式が郵送されてくることがあります。最近は法務局まで行ってご自身で登記される方も増えてきました。何度か足を運んで登記申請をしているようです。
他のページで記載したことがありますが、登記申請は本人か代理人のみ行うことができるので、もちろん問題はないのですが、ご本人が手続きをする場合のメリット、デメリットについて考えてみたいと思います。
①司法書士に依頼した場合の報酬がかからない!
→通常司法書士の報酬は1万円~となっていることが多いので、この分は確かに安く
なります。
②勉強になる。
→実際に「登記なんて自分でやる機会がないからやってみよう」という方がいらっしゃ
いました。
①法務局に行かなくてはならない。
→場合によっては3回、4回と足を運ぶことになるかと思います。郵送という手段もあり
ますが、登記の知識がゼロからスタートした場合、申請書の書き方や、必要書類の準備など、すべてを完璧にしなければなりません。法務局には審査の基準があるのですが、
不備があった場合は「補正」と言って訂正しなければなりません。
②法務局は平日しか開いていない=仕事を休む必要がある。
→意外と知らない方がいらっしゃるようですが、法務局は官公庁なのでカレンダー通りの
営業です。平日お仕事されている方はお休みを取っていくことになります。
また、行く回数が1回で済まない可能性もあります。
③時間が経つと手続ができなくなる可能性がある
→ローンを完済して銀行から書類をもらったものの、そのまま手続をせずに時間が経過
した場合、書類を紛失したり、書類が使えなくなったりすることがあります。
この場合は再度銀行に協力してもらって書類を再発行してもらう必要があります。
と、簡単に言ってしまえば司法書士に報酬を支払って代行してもらうのか?自分で時間をかけてやってみるかの問題です。抵当権抹消登記は数ある登記の中でも比較的簡単な登記にはなりますので、時間があればやってみてもいいかもしれません。もし私が司法書士でなかったら自分でやってみようかと思うかもしれません。
因みに、司法書士に依頼しても、ご自身で手続しても登録免許税という税金がかかります。計算方法は土地・建物の数×1,000円です。全て無料というわけにはいかないのでお気をつけください。抵当権抹消登記について、ご不明な点があればお気軽にご連絡ください。
引っ越した、名字が変わった →住所・氏名変更登記
引っ越して住所が変わった場合、結婚で名字が変わった場合等に行う登記です。
こちらでは一般的に必要な書類等をお伝えします。
住所変更(引っ越し等の場合) 通常、以下の書類が必要になります。
・住民票、又は、戸籍の附票
こちらは登記簿に記載されている住所から現在の住所まで全ての記録がつながっていることが必要になります。いわゆる転勤族のような方の場合は、戸籍の附票の方が住所がつながる可能性が高いことが経験上多いです。
ところで、「戸籍の附票」とは何ですか?とよく聞かれるのですが、こちらは一言で言えば、「戸籍に紐づけられた住所の履歴」です。「戸籍に紐づいた」というのがポイントで、結婚等で戸籍が書換わっている場合などは新しくできた戸籍の附票に記載されている住所の履歴が少なく、住所の連続性が取れないこともあります。
・委任状
司法書士への委任状です
氏が変わった場合(結婚等で名字が変わった場合) 通常、以下の書類が必要になります。
・戸籍謄抄本
・住民票(本籍入りのもの)又は、戸籍の附票
・委任状
戸籍謄抄本とは?
少し細かい話ですが、戸籍謄抄本というのは謄本(全部という意味です)と抄本(一部という意味です)を組み合わせた言葉です。登記申請では、該当する方が記載されているものであれば足りますので、仮に奥様の名字が結婚で変わったのであれば奥様の戸籍抄本でも足りるということです(この場合、謄本であっても手続き可能です。登記を審査する法務局は必要以上の情報が記載されていても余計なことは干渉しません。)。
住所・氏名変更登記は、司法書士の報酬に加えて、登録免許税が不動産1つにつき1,000円かかります。
補足ですが、長期間変更登記がされていない住所変更登記というものはなかなかの曲者で、昨今話題の「所有者土地不明者問題」の原因の一つとされています。ですので、この登記は現在のところ義務ではありませんが、個人的には、「気づいたとき」に行っておくことをお勧めしております。時間が経過すると余計に費用がかかるので、放っておいてもよいことは一つもありません。