遺言とは

 相続と切っても切れないものとして、最近では「遺言」が当たり前のように取り上げられています。民法が用意している遺言のタイプは大きく分けて2つありますが、それぞれの遺言の違いや、作成した場合・作成しなかった場合の違いについて検討してみたいと思います。
 巷では、遺言書は必ず作成すべき、という記載も時々見受けられます。果たして本当にそうなのか一度考えてみるよい機会になれば光栄です。

 そもそも遺言とは?

 遺言とは、民法に定めがあるのですが、「遺言」と書いて「ゆいごん」と読むのが正確です。ただ、「いごん」でも日常的に使う分には全く問題ありません。
 民法では相続に関して、次の順番を定めています。

 ①遺言 ②遺産分割 ③法定相続分 

 この順番は、遺産の取得についての優先順位なのですが、遺言書があれば遺言書が一番優先され、遺言書がない場合は遺産分割協議になり、二つともない場合は法定相続になる、という意味です。
 また、同時に遺言者(遺言を作成する人)の意思が唯一反映できるのが遺言ということも言えます(ここでは、遺留分については省略します。)。
 なお、遺言には大きく分けて2つのタイプがあると書きましたが、それは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」のことです。
 詳細はそれぞれのページに記載をしておりますが、簡単に言えば、「作成時」に手間暇とお金をかけるのか、それとも遺言書の「使用時」に手間暇とお金をかけるのかということに尽きるのではないかと個人的には思います(言い換えれば遺言者が費用をかけるのか、相続人が費用をかけるのか、とも言えます。)。 
 と、文章で書いてもわかりにくいかと思いますので以下に簡単な表をご用意いたしました。

メリットデメリット
自筆証書遺言・いつでも作成可能
・費用がほとんどかからない
・作成したこと自体が秘密にできる
・作り直しが簡単にできる
・遺言の記載方法が厳格であるため、
 場合によって無効になることがある
・紛失したり、誰かに破棄されて
 しまう可能性がある
・遺言執行(遺言書で手続きすること)のために家庭裁判所の検認手続きが必要になる
(この際、相続人全員に裁判所から通知が届く)
・(直筆であることが必要なため、)字が書けない人は作成できない
公正証書遺言・公証人が関与するため無効になることが少ない
・原本は公証役場にて保管されるので紛失や改ざんの恐れが少ない
・家庭裁判所の検認手続きが不要
・字が書けない人でも作成できる
・作成時に公証人の手数料がかかる
・証人が二人必要になる
・公証人と証人には遺言書の存在が知られてしまう

 別に私は公証役場の回し者でもないのですが、比較していただくと公正証書遺言の方が(後々のことも考えれば)使い勝手がよいと思います。
 近年、遺言書の制度は色々と改正されてはいるのですが、それでもやはり、作成するなら公正証書遺言の方がおすすめです。
 では、次に遺言書を作成した方がよいかについて考えてみましょう。

 遺言書を作成したほうがよい場合

 まず、お子様のいない夫婦には遺言書を作成することをお勧めしています。
 と言うのは、もし仮に夫婦の一方に相続が発生した場合、配偶者に加え両親や兄弟姉妹が相続人となる可能性があるからです(もちろん両親も兄弟姉妹もいなければ相続人は配偶者のみですが。)。この場合、遺言書がなければ両親や兄弟姉妹を交えて相続手続きをしなくてはならなくなります。

 遺言書を作成しなくてもよい場合

 一方、遺言書を作成しなくてもよい場合なのですが、これははっきり言ってしまうと遺言書を作成しようとするご本人次第です。と言うのは、そもそも遺言とは遺言者が作りたいときに作るものであって、本人が希望しない以上、他の誰かが代わって遺言書を作成することはできません
 ですので、本人が「自分の亡くなった後は好きにしてほしい」と思うのであれば遺言書を作ることはできないわけです。
 ただし、一方で、遺言というのは残された相続人のためにある制度とも言えます。実際に遺言書を使って相続手続きをするのは残された相続人であり、遺言書があればそれに従って手続きをできるので、相続人としても他の相続人の協力を得ないまま手続きを進めることができます。特に、行方不明の相続人がいたり、手続きに協力してくれない相続人がいる場合は遺言書の有無によって残された相続人の苦労が大きく変わってくることになります。

 自筆証書遺言と公正証書遺言については別にご説明しておりますので参考になさってください。
 また、当事務所では遺言書の作成についてもお手伝いさせていただいております。そもそもどちらの遺言がよいかなど、ご不明な点はご相談ください。

あいば司法書士・行政書士事務所
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